何年振りの更新でしょう…。
マンガ自体は十代の頃から割と好きでしたが、アニメはどちらかというと苦手でした。世代的に、ヲタクにはネガティブなイメージが強かったからかもしれないし、単純に80~90年代のアニメのノリが自分とは合わなかったからかもしれません。
そんな私ですが、何故か歳をとってから、アマプラでよく観るようになりました。そして現代(イマ)の作品が良いです。
最近ドハマりしたのが「僕の心のヤバイやつ」
私にとってはウン十年前の、中二時代を舞台とした、思春期ラブコメ。
最初は他のいくつかのラブコメと同じ感覚で観ていましたが、いつの間にかアニメも原作マンガも繰り返し観る事態に。
思春期の心理描写と精神的成長がとてもリアルで、ノスタルジックな気持ちになります。
そして、もちろん現代の話なので、私の中学生時代にはなかったスマホやPC、今ほど身近ではなかったコンビニがあります。「あの頃にあったらなぁ」と羨ましく思うところでもありますが、思春期、反抗期の心理、言動は今も昔も変わらないなぁと、ちょっと恥ずかしくなりながらも微笑ましく見ています。
<↓ネタバレあり↓>
主人公の市川京太郎は、厨二病まっ只中の陰キャ男子。
ヒロインの山田杏奈は、モデルとして売り出し中のクラス・ヒエラルキー頂点女子。
物語冒頭で、市川は山田を殺戮のターゲットとして、よからぬ妄想を繰り広げています。それを初恋とも気付かずに。
山田との接点もなく、冷たい一瞥を投げられたと感じれば、底辺コンプレックスを拗らせて、殺しの妄想を膨らませます。
レビューをいくつか見ると、この冒頭の市川の厨二病を許容できるかどうかが、本作の最初にして最高のハードルのようです。この部分は真直ぐに受け取らず、ユルく「拗らせてるんだねー」と見守るのが吉です。
一方の山田は、カワイイ事を自覚こそすれど、それを鼻にかける様子は微塵もなく、ウェイ系ではない天然陽キャ。
昼休みをひとり図書室で過ごす市川と、ある理由で図書室に来るようになった山田の、最初の接点が直ぐに訪れます。
意識しまくり、挙動不審の市川ですが、本人もそうとは気付かない優しさと気遣いが全開です。しかもそれを気付かれまいとこっそり行動するところに、惚れさせ要素が満載です。
それに対して、マイペース(ド天然)に振舞い、何の気もなく接してくる山田。山田のそれは、自分が食い散らかしたお菓子の空袋を市川に押し付けるなど、ある意味無神経であり、物語序盤は市川の事をまだ同級生の一人としか認識していない様子。ただ彼を、陰キャと馬鹿にしている雰囲気はありません。
図書室から始まったふたりの、何てこともない筈の関係が、曲がりくねりながらゆっくりと進んでいき、恋の駆け引きもいつの間にか対等か、山田の方が負けてるんじゃないか?と思うくらいに、市川に惹かれていく様が、そして市川は山田への気持ちが恋と気付いても、それは叶わぬものと疑わず、自意識を拗らせながらも恋心に抗えなくなっていく様が尊い。
山田との格差を否応なく感じ取り、自分が傷つく事を恐れ、山田の言動をネガティブに捉えたり、近づきすぎないよう素っ気なく接する市川。しかし、ここぞという時の思いやりや優しさをしっかり行動に起こせる市川。
飲食禁止の図書室でお菓子を爆食いし、時には「ねるねるねるね」「プルーチェ(フルーチェな)」を持ち込んで作るなど、幼稚さが抜けない山田。その反面、芸能活動にはプロ意識を見せる山田。
山田がいつ市川を意識し始めたのかは、読み手次第なところではありますが、接する時間が増えていくごとに、山田の愛読マンガ「君色オクターブ」の主人公と市川を重ね合わせていったのは、想像に難しくありません。
目覚めた性に貪欲な、思春期のおバカな一面を同級生男子たちに演じさせ、それと同じ興味、衝動を持ちながらも同性のアホ加減にイラつく市川という構図は、本当に私の大昔の中学時代を彷彿とさせ、笑ってしまいます。こういうアホな奴ら、いたー。因みに私は市川側でした(笑)
結局どちらも同じなんです。
アニメならではの演出が、原作をモチーフとしながらも秀逸だったシーンがいくつもあります。例えば…
1)市川が山田を好きだと自覚する
体育授業中、バスケットボールが顔に当たり、保健室に連れていかれる山田。
これ以上関わるな、という気持ちとは裏腹に、山田を追って保健室に忍び込む市川。
止まらない鼻血を押さえながら、翌日の撮影仕事をキャンセルせざるを得なくなった事と、商売道具の顔面の危機に直面して泣きじゃくる山田を、ベッドの下に隠れて見ていた市川も、意図せず涙を流す。
<追加シーン>
その時、山田のパスケースが落ちてきて、ゆっくり(ゾーン?)市川の視界に飛び込んできた。そこには、いつか渡した自作の絵が大事そうに入っていた。
原作での市川は、自分の涙だけで山田への想いに気付く、という描写でした。
アニメでは別のエピソードを、非常に効果的にガッチャンコしていました。
クラスいち性欲丸出し男子の足立が、ツレ達と散々下ネタを繰り広げた後、「山田さんにコレ渡して」と市川にメモを託します。自分へのイジメおよび、どうせくだらない下ネタが書かれているだろうと踏んだ市川は、そんなものを山田に見せたくないわけで、咄嗟に自作のキャラデザ絵(本人は認めないが山田がモデル)と摩り替えて渡します。
原作ではその絵を見た山田の顔がパアァっとなって終わり、バスケ怪我エピソードとは繫がりのない独立した話ですが、アニメではこのエピソードを初恋自覚の伏線として、見事に使っていました。
2)先輩にファミレスに拉致られる
大晦日の夜、コンビニに出かけた市川は、山田にご執心なチャラ3年生、南条先輩(ナンパイセン)に出くわします。強引にファミレスに連れていかれ、山田のLINEを執拗に聞き出そうとするナンパイセン。かつて山田がパイセンに使った「引かせる話法」を引用したり、ビビりながらも知らないと言い張っていたところに、タイミング悪く山田からメッセージが。その画面を見られてしまい、窮地に陥った市川…。
原作:
南条の先輩(ウェイ系。南条が敬語で話している事から高校生でしょう)もいてビビるしかない状況の中、パイセンと同行していた山田の友達でビッチ(市川の印象)同級生の萌ぴーが「帰るから送って」と市川に助け船を出す。
アニメ:
原作と違い、南条の先輩はおらず。同席の女子をドリンクバーに行かせて市川とタイマンの状況を作る。(萌ぴーは自ら席を離れる)
市川は漢気を出し、山田情報の提供を断固拒否。それを見届けた萌ピーが戻ってきて、上記原作の流れに。
このエピでは、咄嗟に「市原」と偽名を使った市川に合わせたり、山田と市川のために市川が同クラである事を知らないふりしたり、山田と市川の関係性を察知していたナンパイセンの「都合の良い女」が、それを口にしようとした時に蹴りを入れたり、市川を連れ出す際に「友達なんで」と、それまで演じていた(無)関係性をひっくり返したり、原作もアニメも、萌ぴーがカッコいいです。
そしてアニメ版は、市川の山田への想いとその決意が、より鮮明に描かれています。
付き合いたいとかそういう事よりも、山田を守るという決意に見えます。
アニメのテーマ曲も素晴らしい。
特にOp曲 ヨルシカ/斜陽 には、何度も目頭を熱くさせられてしまいました。
上にはアニメOPのノンクレジット版を貼ったので、こちらにはヨルシカのMVを貼ります。
この「僕ヤバ」、原作の第8巻まで読み進め、アニメもシーズン1のエピソード12まで観ました。シーズン2も制作決定!という事でめでたい限り!
その上でひとつ懸念というか、心配が…。
ヒロインの山田杏奈は、お菓子を爆食いしたり練り消しを作ったりする精神年齢の幼い少女でありながら、恋を知り、そして仕事への情熱も燃やす大人な一面を持ち合わせています。
主人公の市川もまた、バカげた妄想と捻くれた自意識過剰から脱し始めて、精神的に大きくなってきています。
そして山田は芸能人として着実に成功を掴み始めていて、恋愛が難しくなる状況が目前に迫っているように思えるのです。
そんな二人が選択する将来を考えると、少し胸がズキっとしてしまいます。
コミックス5巻最終話の市川の、姉とのやり取りは実にリアルで、人生だと思えてくるのです。
姉「成長して環境も変わってー…心だって変わるんだよ」
私も、こんな良いものではなかったかもしれないけれど、中学生の頃に初めて彼女ができました。市川の言動にはかつての自分と重なり合う部分が多くあり、もっと若い頃にこの物語があったなら、そして目にしていたなら、市川が過去を思い出して「頭がっ!」となるように、苦しんだかもしれません(笑)。
今となっては無駄としか言いようのない自意識過剰、小さな嫉妬を説明できずに機嫌を損ね相手を避けてしまう、ファッションや食事などで、自信の無さとイミフなプライドが渦巻くなど、私が通ってきた道を市川がいま歩んでいます。
マンガは絶賛連載中だし、アニメも二期が決まりました。
市川と山田の物語から、しばらく目が離せそうもありません。
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